物のこころ
けっして広くはない家で育ったからか、
我が家には定期的に
物を整理する時間があった。
あれもこれも、
持っていることを忘れていた物ですら
またいつか使うような気がして
なかなか捨てられない、幼いわたしに
両親が決まって言うのは、
「1年間使ってないものは
もうバイバイしよう。
使ってないものをずっと持っておくのは
その物に対しても失礼よ」。
物にこころがあるのか
よくわからないけれど、
人も、物も、
なんというか、同じこの世の一存在だから
自分の手元にちゃんと責任をもって
大切にしよう、と
お互いに気持ちのいい関係を築こう、と
家の中を整理するたびに
小さい頃を思い出す。
(あ、それは必ずしも持ち続けることじゃなくって、
必要としている人にあげたり、別の使い方をしたりすることを含めて。)
そうして
人も物も、貴ぶ人のまわりには
きっと
いつも、清らかで豊かな空気が
ふわりとただよっている気がする。
(写真;ライ麦のプチプチ感とかうっすら透けるレモンピールに、わくわくする朝。)